「空室率を気にしなくてよい」という大きなメリットのあるサブリース契約。実際にかかる費用はどのくらいなのでしょうか?
賃貸管理会社とサブリース契約を結ぶ際、オーナー側の費用負担はないところがほとんど。まれに、空室のクリーニングやリフォーム後でないと契約できない、という会社もあります。
もちろん、その際のハウスクリーニングやリフォーム費用はオーナー負担となります。
そして、気になるのはサブリース契約を結ぶことで、管理会社に支払わなければならない費用のこと。実際に、どんな費用がかかるのでしょうか。
サブリース契約の家賃保証率の相場は、80%~90%と言われており、つまり、サブリース会社や管理会社へ実質的に支払う費用は、家賃収入の10%~20%ほど。
この他にも、契約内容によっては、システム費用などの名目で別途費用が差し引かれる事もあるようです。
サブリース契約をしても、下記のような建物のメンテナンスにかかる費用は、一般管理と同様に物件オーナーが負担しなくてはいけません。
この際、サブリース会社指定の業者による施工となり、相見積もりもとれない場合が多いそうです。
契約時の礼金や更新料などは、基本的にサブリース会社の利益として扱われます。また、「空室となってから一定期間は家賃が保証されない」という免責期間が設けられている場合も多いです。
免責期間中は、たとえ入居者が決まったとしても、オーナーへの家賃保証は行われません。その期間の家賃全額がサブリース会社の利益となります。
また、基本的に保証家賃の値下げが2年~4年ごと行われるため、保証される家賃も下がっていきます。
サブリース契約を検討する場合は、「空室を気にしなくても良い」というメリットと、「一般管理の場合との利益の差」とを天秤にかけ、しっかりシミュレーションする必要があります。
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実際にオーナーの家賃収入がどうなるのか、新たに物件を購入し、サブリース契約をした場合と、管理業者に委託した場合の4年間の家賃収入を比較してみました。
一般的に、サブリース契約を結ぶ場合、そもそもの保証家賃(入居者が支払う家賃)は、周辺の類似物件よりも安く設定される場合が多く、また、数年ごとに保証家賃の見直しがされて、金額が下がっていく傾向にありますが、今回は分かりやすくするために、どちらの条件でも、入居者が支払う家賃を同額にしています。
種別 | サブリース | 一般管理 (満室) |
一般管理 (入居率90%) |
---|---|---|---|
年間家賃 | 4,800万円 | 4,320万円 | |
サブリース費用 | 960万円 | 無し | |
免責期間中の家賃 | 200万円 | ||
管理委託費用 | 無し | 240万円 | 216万円 |
礼金 | 100万円 | 90万円 | |
更新料 | 100万円 | 90万円 | |
オーナー利益 | 3,680万円 | 4,760万円 | 4,284万円 |
※詳しい内訳を以下で説明します。
(家賃10万円×80%)×10戸×4年(48ヶ月)=3,840万円
(家賃10万円×20%)×10戸×4年(48ヶ月)=費用960万円
(1)の金額は、本来の家賃からこの費用が引かれています。
なし(サブリース会社が受け取るため)
160万円
(1)3,840万円-(2)160万円=収入3,680万円
その他にも保証賃料から引かれる費用には、共用部の清掃費・電気代・水道代・修繕保持費などがあり、物件・地域・契約内容によって金額は変わります。
※4年間満室だった場合
家賃10万円×10戸×4年(48ヶ月)=4,800万円
礼金・更新料共に10万円×10戸=100万円
家賃10万円×管理手数料5%×10戸×4年(48ヶ月)=240万円
(1)家賃4,800万円+(2)礼金・更新料200万円-(3)管理委託費用240万円=収入4,740万円
※入居率が90%(空室率10%)だった場合
家賃10万円×10戸×4年(48ヶ月)×入居率90%=4,320万円
礼金・更新料共に家賃10万円×10戸×入居率90%=90万円
家賃10万円×管理手数料5%×10戸×4年(48ヶ月)×入居率90%=216万円
(1)家賃4,320万円+(2)礼金・更新料180万円-(3)管理委託費用216万円=収入4,284万円
上記計算の通り、90%以上の入居率の場合、サブリース契約では約500万円~1,000万円も見込み収入が減る計算となります。
新築である初年度は入居率も高くなるため、サブリースの恩恵を充分に受けられないかもしれません。
また、サブリース契約には免責期間が設定されており、保証家賃の収入が受け取れない期間があることも収入に影響します。所有している物件がどのくらいの入居率になるか把握していないと、初年度に大きく損をしてしまう可能性があります。
もちろん、サブリース契約では広告宣伝費や家賃保証会社への保証料がかかりませんので、管理業者に委託した場合、それらの経費の金額によってオーナーの収入は変わります。
賃貸経営をサポートしてくれる会社の中には、自社施工の物件に限って、以下のような管理業務を管理委託費無しで請け負ってくれる業者もあります。
このサービスを利用した場合の収入もシミュレーションしてみましょう。計算しやすくするため、どちらも満室の場合を想定しました。
種別 | 一般管理 | 無料管理 |
---|---|---|
年間家賃 | 10万円×4年×10戸= 4,800万円 |
|
管理委託費用 | 4,800万円×5%= 240万円 |
無し |
礼金 | 10万円×10戸= 100万円 |
|
更新料 | 10万円×10戸= 100万円 |
|
オーナー利益 | 4,760万円 | 5,000万円 |
サブリースと一般管理ほど、大きな差は出ませんが、管理委託費が無料になることで、手残りの金額も変わります。現在、賃貸物件での土地活用を検討している方にはおすすめの物件管理方法です。
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サブリース契約を結ぶ前に押さえておきたいポイントがあります。保証料や賃料の見直しなどは収入にも関わるため、あらかじめ確認しておきようにしましょう。
サブリース契約での収入は、サブリース会社からの保証料です。仮に家賃と保証料が同額とすれば、間に入ったサブリース会社の儲けがなくなってしまいます。一般的に保証料は家賃の80~90%で、その差額の10~20%がサブリース会社の利益となるというわけです。保証料の割合はサブリース会社によって異なります。保証率が高ければ、高い利益が望めるでしょう。
サブリース契約を行わず、自分で直接貸すことができれば家賃の100%が自分の収入となります。サブリース会社と契約すべきかどうか、よく考えたほうが良いでしょう。
同じ条件の物件でも、新築と築20年では家賃が異なるのはご存じのとおりです。このように家賃は定期的な見直しが行われます。家賃が下がれば保証料が減るため、収入がダウンするでしょう。サブリースでは空室保証が売りとなっていますが、実質的な収入は将来的に下がっていきます。特に住宅ローンを利用する人は、このことを考慮に入れて返済計画を立てることが大切です。
経年による理由のほかに、空室の増加によって家賃が低下することがあります。そのままの家賃では入居者が望めない場合、空室にしておくより安い家賃で住んでもらったほうが良いからです。
平成25年住宅・土地統計調査[注1]を見ると、空き家が増え続けていることが分かります。今後も人口減少に伴い、アパートの空室が増えていく可能性が高いです。空室の増加とともに、家賃の減少が続いていることも想定しなくてはなりません。
サブリース契約は間に入ったサブリース会社が入居者とやり取りするため、オーナーは実際に住んでいる人の情報を知ることができません。場合によっては空室で、サブリース会社の保証金だけ発生しているということもあります。
また入居者がいる状態で、サブリース会社とのサブリース契約を解除したとしましょう。解除後は入居者とオーナーが直接やり取りすることになります。家賃の振込先も変わるでしょう。しかし、サブリース会社が入居者の情報を教えてくれないと、連絡がつきません。入居者のプライバシーを守るのは大切なことですが、オーナーとしては不具合も生じます。このあたりの情報共有がしっかりしているかどうかも、サブリース契約を結ぶ前に確認しておきましょう。
サブリース契約はオーナーとサブリース会社の契約です。一方、実際の入居条件については、サブリース会社と入居者の間で決めます。そのため、仮にサブリース契約を途中で解除したとしても、この入居条件は継続されるのです。
このとき、更新料や敷金のことが入居者に伝わっていなかったり、逆にサブリース会社が持っていってしまったりということが起こります。トラブルを防ぐために、オーナーも入居条件について確認しておいたほうが良いでしょう。
サブリース契約には家賃保証といったメリットだけでなく、デメリットもあります。サブリース会社の言いなりになって契約してしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまうことも。契約を後悔しないためにも、あらかじめデメリットも確認しておきましょう。
サブリース契約最大のメリットは、空室リスクへの対応です。たとえ空室でもサブリース会社が一定の保証料を支払ってくれるので、安定した収入が得られます。
不動産投資においては、住宅ローンを借り入れていることがほとんどでしょう。収入が得られないことにはローンの返済が滞ってしまいます。サブリース契約なら保証料が得られるので、安定して返済することができるでしょう。
物件運営をサブリース会社に任せることができるのもサブリース契約の魅力。自分で賃貸運営をしようと思うと、入居者募集や家賃回収、クレームへの対応、建物のメンテナンスなど、さまざまな業務が必要です。不動産管理を行ったことがない人にとっては、どうしたら良いのか分からないことだらけでしょう。サブリース契約を結べば、その会社が賃貸運営を代行してくれます。未経験の人やほかに仕事のある人でも、安心して賃貸運営を任せることができるのです。
確定申告が簡単になるというメリットもあります。通常の賃貸契約だと、入居者一人ひとりの情報を書類に記入しなければなりません。サブリース契約だと特定のサブリース会社だけが相手方なので、記入の手間が省けます。
サブリース契約は気軽に解約できるものではありません。サブリース会社によっては短期の契約も結んでいることがありますが、多くの場合20~30年といった長期契約となっています。また、途中で解約するときには高額な違約金が発生。違約金は家賃4ヶ月~6ヶ月分ということが多いです。一棟まるごとの家賃となると、相当高額になることでしょう。違約金が払えずにサブリース契約が解除できないということもあり得ます。
オーナーからの解約には高額な違約金を請求する一方で、サブリース会社側からはあっさり契約を打ち切ることができます。多くの場合、解約の理由は空室の増加です。サブリース会社の視点に立って考えてみましょう。空室だらけのアパートでも、家賃の数パーセントはオーナーに支払い続けなくてはなりません。
家賃収入がないのにオーナーに保証料を支払い続けるのでは、サブリース会社にとってまったくメリットがないのです。先述したように、空き家は増える一方。アパートの空室も増加し、家賃保証が難しくなっていくでしょう。
サブリース終了後はオーナーが自ら賃貸運営することになります。このとき、サブリース会社が入居者の引継ぎをしっかりしてくれれば良いのですが、不誠実な会社だと情報提供を行ってくれない可能性も。入居者がサブリース終了後もサブリース会社に家賃を振り込んでしまい、オーナー側にお金が渡らないリスクもあります。更新料や敷金の引継ぎにも注意が必要です。契約終了後のサポートについて、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
サブリースのメリットとデメリットについてご理解いただけたでしょうか。「○十年家賃保証!」のような売り文句を見ると魅力的に感じますが、必ずしも安定した収入が得られるとは限りません。サブリース契約を行う際には、契約内容をしっかり確認したうえで判を押すようにしましょう。
サブリースはあくまでひとつの手段。自主管理や管理委託も選択肢に入れて、どの方法が自分の賃貸経営に合っているか考えることをおすすめします。